Dots & Frame
職人さんの技が光る織物と工芸を扱う新ショップ「zou transart」さんの、バッグの企画/デザイン/制作をしました。
zou transartさんと私たちの関係
zou transart の母体は江戸後期から続く織物メーカー。1815年に生糸問屋として創業し、今まで200年以上もの間、機屋として技術を高め続けてこられました。八代目の永井洋三さんが「きものという形にこだらわず絹織物をもっと身近に感じていただきたい」という思いから2020年に立ち上げられたのが eiziya ZOU。さらに「アートの概念を超え新たな視点で織物や工芸の美に向き合いたい」と2024年2月に誕生したのが、2店舗目となる zou transart です。
私たちは2022年よりeiziya ZOUの商品をつくらせていただいており、そのご縁から zou transart にもお声がけいただきました。「新しいお店は、年齢・性別・国籍に関わらず、皆さんに気軽に入っていただける場所にしたい」。企画の初期段階でお聞きした永井さんの新店舗のイメージをもとに、新しいお店はどんな場所になるだろう?私たちにはどんなバッグがつくれるだろう・・・?これまでお仕事をご一緒させていただく中で触れた永井さんのものづくりの考え方や感性に私たちを重ね、新しいお店のお客様のイメージを膨らませて生まれたのが “Dots” と “Frame”です。
“Frame”(フレーム)
A4サイズ雑誌が入る大きめバッグと、サイズちがいの小さめバッグ。帆布をベースとしており、普段使いにもぴったり。グラフィカルに組み合わせた布を、額縁(フレーム)に入れた絵画に見立てました。
デザイン時に大切にしたこと
最も大切にしたのは「布のもつ力を存分に感じられること」。私たちが布に感じる力は、永井織物さんが長年かけて培われた機織りの技術と、その技術を今につないできた人々の情熱、そして職人さんの手から生まれる温かさ。生きもののようなゆらぎのある美しさを、そのまま表現したいと思いました。
次に大切にしたことは「できるだけ色をつけないこと」。年齢・国籍・性別に関係なく、多様な人に布の魅力をお伝えする zou transart。私たちが特定の印象をもたらすことなく、観る人が布を自由に感じられる、アート作品のようなプロダクトを目指しました。
仕立て時のこだわり
バッグに仕立てる際に特にこだわったのは、曲線の表現です。布に宿る生きもののような温度感をもたせながら、特定の印象に偏らせない。この2つの要素を両立させるために、平面と立体のバランスを調整しながらいくつも試作を重ね、最終的に平面の要素を多く取り入れた形にしました。曲線を美しく表現するために、布の縁は手作業でダーツを施し、布が重なる部分は表面に糸が出ないよう手で縫い合わせています。
ふたつのバッグ、それぞれが唯一無二の存在。世界にひとつとして同じものはありません。ぜひ店で心惹かれる組み合わせを探してみてください。素晴らしい布たちを観る楽しみを感じていただけると嬉しく思います。